平成18年(2006)5月1日をもって会社法が施行され、株式会社となった特例有限会社(基礎編)について、掲載いたします。

特例有限会社とは

泉水司法書士事務所 特例有限会社

(1)特例有限会社はその商号中に有限会社という文字を用いなければならない。

(※会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年7月26日法律第87号)以下「整備法」という。)

  1. 旧有限会社であって整備法2条1項の規定により存続する株式会社は、会社法6条2項にもかかわらず、その商号中に有限会社という文字を用いなければならない(整備法3条)。このような株式会社を「特例有限会社」という。
  2. 既存の有限会社は「特例有限会社」という株式会社として存続する。

(2)有限会社法は廃止された。

(※有限会社法は廃止されたが、有限会社は「特例有限会社」として存在する。)

  1. 会社法の施行に伴って有限会社制度が廃止され、株式会社に統合された。

(3)特例有限会社は何により規律されるか。

  1. 有限会社法の規律と会社法の規律には異なる部分がある。
  2. 有限会社と株式会社との異なる諸概念の調整が必要となった。
  3. 有限会社法特有の規律について会社法の特則として整備法に規定が設けられた。
    ※第1章 第2節 有限会社法の廃止に伴う経過措置(整備法2条~46条)

特例有限会社の機関・分類

(1)株主総会以外の機関の設置に関する特則(整備法17条)

(※会社法第326条第2項中「取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会」とあるのは、「監査役」とする。)

選択可能な機関

  • 株主総会+取締役(1人)
  • 株主総会+取締役(複数)
  • 株主総会+取締役(複数)+代表取締役
  • 株主総会+取締役(1人)+監査役
  • 株主総会+取締役(1人)+監査役
    (登記事項ではないが定款で会計監査権限のみに限定)
  • 株主総会+取締役(複数)+監査役
  • 株主総会+取締役(複数)+監査役
    (登記事項ではないが定款で会計監査権限のみに限定)
  • 株主総会+取締役(複数)+代表取締役+監査役
  • 株主総会+取締役(複数)+代表取締役+監査役
    (登記事項ではないが定款で会計監査権限のみに限定)

(2)~特則・分類(整備法17条)

(※会社法第328条第2項の規定は、適用しない。)

  1. 公開会社でない会社(譲渡制限のない株式を発行できない会社)
  2. 大会社に関する規定は適用されない会社

特例有限会社の役員変更の取り扱いについて

(1)取締役の任期等に関する規定の適用除外(整備法18条)

(※会社法第332条(取締役の任期)、第336条(監査役の任期)及び第343条(監査役の選任に関する監査役の同意等)の規定は、適用しない。)

  1. 定款に取締役の任期を定めなければ、任期規定の適用はない。
  2. 定款にて監査役を定めている場合において、定款に監査役の任期を定めなければ、任期規定の適用はない。

(2)登記に関する特則(整備法43条1項)

(※役員に関する登記事項は、従前の有限会社の登記事項と同じだが、旧有限会社法27条3項の会社を代表すべき取締役の共同代表の定めは、廃止されているので、これは登記できない。

  1. 取締役の登記事項
    取締役の氏名及び住所
  2. 代表取締役の登記事項
    代表取締役の氏名(特例有限会社を代表しない取締役がある場合に限る。)
  3. 監査役を置いた場合の登記事項
    監査役の氏名及び住所(監査役設置会社である旨は、登記事項でない。)

定款記載等の経過措置(整備法2・5・9・24条、経過措置政令5条)

(1)定款における事項又は記録がないものとみなす事項(整備法5条1項)

(※下記に掲げる事項の記載又は記録は旧有限会社であって整備法2条1項の規定により存続する株式会社の定款に記載又は記録がないものとみなす。)

  1. 資本金の額
  2. 出資1口の金額
  3. 社員の氏名・住所
  4. 各社員の出資口数

(2)会社法第27条第1号~第3号までの事項の記載又は記録とみなす事項(整備法5条1項)

(※下記に掲げる事項を整備法第2条第1項の規定により存続する株式会社の定款における会社法第27条第1号~第3号までに掲げる記載又は記録とみなす。)

  1. 商号
  2. 本店の所在地
  3. 目的

(3)整備法2条2項でみなされる事項

(※下記各左記の旧有限会社の定款に掲げる事項を整備法第2条第1項の規定により存続する株式会社のそれぞれの右記に掲げる事項とみなす。)

  1. 社員⇒株主
  2. 持分⇒株式
  3. 出資1口⇒1株

(4)整備法2条3項でみなされる事項

(※旧有限会社の資本金の額を当該旧有限会社の出資一口の金額で除した数とする。)

  1. 発行可能株式総数
  2. 発行済株式の総数

(5)株式の譲渡制限の定めに関する特則(整備法9条1項)

(※その発行する全部又は一部の株式の内容として前項の定めと異なる内容の定めを設ける定款の変更をすることができない。)

  1. その発行する全部の株式の内容として当該株式を譲渡により取得することについて当該特例有限会社の承認を要する旨及び当該特例有限会社の株主が当該株式を譲渡により取得する場合においては当該特例有限会社が会社法第136条又は第137条第1項の承認をしたものとみなす旨の定めがあるものとみなす。

(6)会社法第939条第1項・第3項後段規定の定めとみなす事項(整備法5条2・3項)

(※旧有限会社の下記各定款の定めは、整備法第2条第1項の規定により存続する株式会社の定款における会社法第939条第1項・第3項の定めとみなす。)

  1. 公告を日刊新聞紙によりする旨
  2. 公告を電子公告によりする旨
  3. 予備的な公告方法の定め

(7)累積投票に関する経過措置(経過措置政令5条)

(※会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成17年12月14日政令第367号)を「経過措置政令」という。)

  1. 旧有限会社で累積投票ができる旨の定めがない場合⇒累積投票ができない旨の定めがあるものとみなす。

通常の株式会社への移行について(整備法45条)

(※通常の株式会社への商号変更の定款変更の効力は、本店の所在地においてその登記をすることによって、その効力を生ずる。)

  1. 特例有限会社は、定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をすることができる。